全3回でお届けしてきた、Googleのノーコードツール「AppSheet」を使ったオリジナルタスク管理アプリ作成連載も、いよいよ最終回です。第1回ではアプリの土台となるデータ準備と基礎設定を、第2回では見やすい画面(ビュー)とデータ整理の方法を解説しました。
最終回となる今回は、作成したアプリを「さらに使いやすく、賢く」進化させるための操作性の向上と自動化に焦点を当てます。アクションボタンの設置や条件付き書式、自動通知といった機能を実装し、アプリの完成度をもう一段階引き上げましょう。
目次
もう一歩先へ!快適なアプリに進化させよう
これまでの手順で、タスクの登録や一覧表示、進捗管理といった基本的な機能は実装できました。ここから、さらにタスク管理アプリとして便利な機能を追加していきましょう。
- 「ステータスの変更をもっと簡単にしたい」
- 「どのタスクを優先すべきか、一目でわかるようにしたい」
- 「タスクの期日忘れを防ぎたい」
今回は、こうした現場の細かなニーズに応えるための応用的な設定をご紹介します。少しの工夫で、アプリが格段に快適で機能的になります。
ステップ1:アクションボタンで操作を効率化
タスクのステータスを「未着手」から「作業中」、そして「完了」へと変更する際、毎回編集画面を開きステータスを選択し直すのは少し手間です。ここでは、ワンクリックでステータスを更新できる「アクション」機能を追加しましょう。
1.画面左側のメニューから稲妻のアイコン(Actions)を選択します。
2.「タスク一覧」の横の「+」マークをクリックします。

3.「Create a new action」をクリックし新しいアクションを作成します。

4.以下のように設定し、「未着手」→「作業中」に変更するボタンを作成します。
項目名 | 説明 | 設定内容 |
---|---|---|
Action name | アクション名 | 「作業中にする」 |
For a record of this table | 操作対象のテーブル | 「タスク一覧」 |
Do this | アクションの種類 | 「Data: set the values of some columns in this row」 (この行の特定の列の値を設定する) |
Set these columns | 列の設定 | 「ステータス」: '作業中' |
Position | 表示場所 | 「Inline」(一覧の中に表示) |
Attach to column | ボタンを表示する列 | 「ステータス」 |
Only if this condition is true | アクションボタンを表示する条件 | [ステータス] = '未着手' |

5.同様の手順で、「作業中」→「完了」に変更するためのアクションも作成します。
- Action name: 「完了にする」
- Set these columns: ステータス : “完了”
- Only if this condition is true:
[ステータス] = "作業中"
この設定により、一覧画面から直接ステータスを更新できるようになり、タスク管理のスピードが向上します。

ステップ2:条件付き書式で視覚的にアラート
たくさんのタスクの中から、優先すべきものを直感的に把握できるよう、「条件付き書式(Format Rules)」を使って見た目を自動で変更する設定を追加します。
ここでは、期日が過ぎたタスクを赤色で、期日が3日以内に迫ったタスクをオレンジで強調してみましょう。

1.画面左側のメニューからスマートフォンのアイコン(UX)→「Format rules」を選択します。

2.「+Add Format Rule」または「Format rules」の横の「+」マークをクリックします。

3.「Create a new format rule」をクリックします。

4.ルールの設定画面が表示されるので、まず「期日超過」のルールを作成します。
項目名 | 説明 | 設定内容 |
---|---|---|
Rule Name | フォーマットルール名 | 「期日超過アラート」 |
For this data | ルールを設定するテーブル | 「タスク一覧」 |
If this condition is true | ルールの発生条件 | AND([期日] < TODAY(), [ステータス] <> "完了") |
Format these columns and actions | ルールを適用する列 | タスク名や期日など、強調したい列を選択。 「Ctrl」キーを押しながら項目を選択すると複数選択が可能。 |
Highlight color | ハイライト色 | 「red」 |
Text color | 文字色 | 「red」 |
「If this condition is true」に複数条件を設定する場合、AND()関数を使用します。括弧内のカンマで区切ったすべての条件が真の場合にフォーマットが適用されます。今回は、「期日が本日より前」かつ「ステータスが完了でない」場合に適用するという条件式を設定しています。

5.同様に、「期日直前」のルールも作成します。
「期日が今日から3日後までの間」かつ「ステータスが完了でない」場合にルールを適用します。
項目名 | 設定内容 |
---|---|
Rule Name | 「期日直前アラート」 |
If this condition is true | AND([期日] >= TODAY(), [期日] <= TODAY() + 3, [ステータス] <> "完了") |
Highlight color | 「orange」 |
Text color | 「orange」 |

その他、「Text Format」で文字サイズを変更したり、太字や斜体などの設定も可能です。
これにより、タスク一覧を見るだけで、対応が必要なタスクの優先順位を瞬時に判断できるようになります。
ステップ3:アプリのさらなるカスタマイズと自動化
最後に、AppSheetの強力な「自動化(Automation)」機能を使って、手作業を減らし、タスクの抜け漏れを防ぐ仕組みを導入します。
タスクの期日が近づいたときや、新しいタスクが自分に割り当てられたときに、メールなどで通知を受け取れるように設定します。

1.画面左側のメニューからロボットのアイコン(Automation)を選択します。
2.「Create my first automation」または「Bots」の横の「+」マークをクリックします。

3.「Create a new bot」をクリックして、新しい自動化プロセスを作成します。

4.イベント(Event)を設定します。「Configure event」をクリックします。

5.「Create a new event」をクリックします。

6.「Settings」でイベントの設定をします。
項目名 | 説明 | 設定内容 |
---|---|---|
Event Name | イベント名 | 「自動メール通知」 |
Event source | イベント実行の情報源 | Scheduled |
Schedule | 実行頻度 | Daily (毎日) |
Time | 実行時間 | 12:00 pm |
Time zone | タイムゾーン | (GMT+09:00) Tokyo Standard Time |
For Each Row In Table | テーブルの各行に対して実行するか | チェック:オン Table:タスク一覧 |
Filter Condition | フィルター条件 | [期日] = TODAY() + 1 期日が明日のタスクを対象に実行する |

これでメール通知を実行する条件の設定が完了しました。次に送信するメールの宛先や本文を設定します。
7.プロセス(Process)の「+ Add a step」をクリックします。

8.「Create a new step」を選択します。

9.Step名を変更します。「New step」の表示をクリックし「メール通知」と入力します。

10.「Settings」でステップの設定をします。「Send an email」を選択します。
項目名 | 説明 | 設定内容 |
---|---|---|
To | 通知先メールアドレス | メールアドレスを設定。 ※メールアドレスに「-」が含まれると計算式として認識されます。その場合は文字列を””で囲んでください。 |
Email Subject | メールの件名 | 【<<_APPNAME>>】<<[タスク名]>>の期日は明日です |
Email Body | メールの本文 | タスク名:<<[タスク名]>> 等、各列の値を表示。 |
メールの件名や本文のテンプレートには変数が使用可能です。<<[_APPNAME]>>
にはアプリ名が挿入されます。<<[列名]>>
と記載すると列の値が挿入されます。
タスク名:
<<[タスク名]>>
詳細:
<<[詳細]>>
ステータス:
<<[ステータス]>>
期日:
<<[期日]>>
優先度:
<<[優先度]>>
作成日時:
<<[作成日時]>>
▲「Email Body」の設定例

この設定で、面倒な確認作業をしなくても、自動通知メールにより重要なタスクの期日を忘れることがなくなります。
まとめ:業務にフィットするアプリづくりを叶える
全3回にわたり、AppSheetを使ったタスク管理アプリの作成方法を解説してきました。
- 第1回:データ準備と基礎設定 でアプリの骨格を作り、
- 第2回:画面カスタマイズ で見た目と使いやすさを整え、
- 第3回:操作性向上と自動化 でアプリの機能を進化させました。
プログラミングの知識がなくても、日々の業務で使い慣れたスプレッドシートを基に、ここまで高機能で実用的なアプリが作れるのがAppSheetの大きな魅力です。
今回作成したアプリは、あくまで一つのサンプルです。ぜひ、ご自身の業務に合わせて「担当者」列を追加したり、チームで共有してコメント機能を活用したりと、自由にカスタマイズしてみてください。
この連載が、あなたの業務効率化の第一歩となれば幸いです。
ご不明な点や、「こんなアプリは作れないか?」といったご相談がありましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。
AppSheetでタスク管理 の記事一覧
- 第1回:AppSheetタスク管理アプリ作成の第一歩!データ準備と基礎設定
- 第2回:AppSheetタスク管理アプリの応用!見やすい画面とデータ整理
- 第3回:AppSheetタスク管理アプリの完成度を高める!操作性と自動化
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